
*新たな国民病、慢性腎臓病の治療薬を初承認!
(2)逆転の発想から生まれた「フォシーガ」
フォシーガの一般名は「ダパグリフロジンプロピレングリコール水和物」で、SGLT2阻害剤に分類されます。
SGLT2とは、腎臓にある近位尿細管に特異的に発現するタンパク質で、日本語では「ナトリウム・ブドウ糖共輸送体2」と呼ばれています。SGLT2の役割は、ナトリウムとブドウ糖の再吸収です。SGLT2阻害剤は、その役割を阻害する作用を持っています。今までの医学的考え方では、ブドウ糖が尿に混じって排泄されるのは良くない状態とされてきました。ブドウ糖が尿に混じって排泄されることは、血中のブドウ糖濃度が高くなりすぎている、つまり血糖値が高いという状況です。そのため、血糖値を下げるための飲み薬として、インスリンの分泌を良くするもの、効きを良くするもの、食事で取った糖の分解・吸収を遅らせるものなどが使われてきました。SGLT2阻害剤は、「糖が尿から排泄されることは良くない」という考え方を見直し、「余分な糖分を積極的に排出する」という逆転の発想から生まれました。副作用としては、脱水症状や尿路、性器の感染症、低血糖などがあります。
SGLT2阻害剤であるフォシーガは、糖尿病の治療薬として2014年に2型糖尿病の適応で承認され、2019年には1型糖尿病と慢性心不全の適応で承認されました。
フォシーガは、余分なブドウ糖の排泄作用のほか、利尿効果、血圧低下作用などがあり、腎臓の負担を減らす作用を持っています。臨床実験では、現在の標準的な慢性腎臓病の治療方法と比べて、死亡や腎機能の悪化リスクが約39%低下したことが分かっています。そして、今回、慢性腎臓病の適応としてSGLT2阻害剤で日本初承認となったのです。(ただし、末期腎不全や透析施行中の患者は適応対象外になります。)
特定非営利活動法人 日本成人病予防協会 発行「ほすぴ 185号」より抜粋