第一章 脳の謎を解き明かそう
2_脳の老化の仕組みを知ろう その3
*老廃物の蓄積によって起こる「アルツハイマー型認知症」
認知症の中で最も患者数が多い「アルツハイマー型認知症」は、アミロイドβと呼ばれる異常なタンパク質が蓄積することで、脳の神経細胞を死滅させます。そのため、脳萎縮が進行し、認知機能が低下していきます。特に、海馬に蓄積しやすいため、短期記憶に異常が起こりやすくなります。認知機能が低下する原因は解明途中ですが、現時点では下記のようなメカニズムと考えられています。
原因となるアミロイドβは、本来は脳から排除されますが、加齢などにより排除する機能が衰えます。また、神経細胞の近くで排除されなかったアミロイドβ同士が結合し、「老人斑」と呼ばれるかたまりになります。老人斑は、神経細胞の情報伝達を阻害したり神経細胞を攻撃して死滅させます。さらに、本来であればアミロイドβを排除する物質が、老人斑となったアミロイドβによる攻撃をウイルスなどの病原体によるものだと勘違いをして、アミロイドβのみならず神経細胞ごと破壊してしまいます。そのため、アミロイドβが蓄積することをきっかけに次々と神経細胞が死滅し、認知機能の低下が起こるとされています。
アルツハイマー型認知症の根本的な治療法は確立していませんが、できるだけ早期に気が付き、認知機能の低下を少しでも遅らせることが大切となります。
特定非営利活動法人 日本成人病予防協会 発行「ほすぴ 193号」より抜粋