- なぜ私たちには心(感情)があるの? その3
木にたくさんのバナナが実っていたとします。エネルギーを早急に必要としているのであれば、空腹感と勇気が湧いて高い木を必死に登ろうとするでしょう。しかし、エネルギーが満たされているのであれば、怪我をするなどの危険性があるため、恐怖や満腹といった感情が脳内で湧き、木には登らないという決断に至ります。あまりにも危険を冒しては、転落死などのリスクがありますが、過剰なまでに慎重になっては、今度は飢え死にしてしまいます。こうした食事をするという行為一つにおいても“生き延びるために”選択を誤らないよう状況に応じて様々な感情が沸き立つようになっているのです。

また、狩猟採集民族であった私たちは、集団で行動していたため、集団から外れてしまうことは、食料の確保が出来ず生命危機に繋がってしまう可能性もありました。そのため、集団から外れる「孤独」への恐怖、不安、悲しみ、また仲間と一緒にいられる喜び、安心感、幸せなども強く感じるようになっているのです。
脳内で何十億もの脳細胞が物質を送り合い、不安・怒り・悲しみ・喜びなど様々な感情が生み出されることによって、それに応じた行動を起こすことが出来ているのです。感情はむしろ無い方が楽だと思うこともあるかもしれませんが、生き延びていくために、脳が感情を使ってその人の行動を指揮し、背中を押しているといえます。心(感情)は、遺伝子として残してくれた命を繋ぐための大事な生命線なのです。
特定非営利活動法人 日本成人病予防協会 発行「ほすぴ 194号」より抜粋