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【ストレスの正体~脳と体の対処力~】その5
  1. 脳のストレス対処力
(2)進化した「前頭前野」による対処力

〈前頭前野によるストレッサーへの対処〉



私たちが日々受け取るストレッサーにより、大脳皮質の感覚領域(視覚野、聴覚野、触覚野、味覚野など)を経由した情報が扁桃体や前頭前野に送られるとストレッサーへの対処が行われます。

まず、扁桃体においては、ストレッサーによって不安や怒り、憎しみなどの情動が生じます。扁桃体のすぐ近くには記憶を司る海馬が位置しているため、互いの情報交換によって生じる情動には過去の記憶や経験も加味されることになります。そしてこの情動は前頭前野の主に眼窩部から伝わり、前頭前野の各領域につながっていきます。

次に、前頭前野の中では、背外側部を中心とした理性的な情報処理をし、情動を抑えていく反応が起こります。理性を発揮する上では、背内側部での社会性に基づく観点も取り入れられます。

具体的な場面を考えてみましょう。例えば、仕事で失敗やミスをしてしまった場合、上司に怒られたり、周囲から冷ややかな視線を感じ取ったり、自分を責めたりすることで、扁桃体において悲しみ、怒り、今後の不安などの情動が生まれます。この情動の強さは、失敗の度合いが大きいか小さいか、あるいはその失敗が全く初めての経験なのか、過去にも似たような経験の有無によっては、すぐに抑えられることもあれば、時間を要することもあります。

このような流れが基本的なストレッサー・情動に対する前頭前野での対処となります。

 

 

特定非営利活動法人 日本成人病予防協会 発行「ほすぴ 183号」より抜粋
【ストレスの正体~脳と体の対処力~】その4
  1. 脳のストレス対処力
(2)進化した「前頭前野」による対処力

〈前頭前野の働き〉

*3つの領域が主な役割を分担し連携している



前頭前野は、図2のように大きく3つの領域に分かれています。ストレッサーが、大脳皮質の感覚領域を経て前頭前野の各領域に伝わると、互いに連係をとりながら情報処理や行動の動機づけなどを行っています。

前頭前野の中でも、背外側部は中枢的な役割を果たしています。いわゆる理性的な情報処理をして、学習したり計画を立てたり判断をしたりしています。眼窩部は、扁桃体とのつながりが深い領域であり、情動の処理に大きくかかわっています。背内側部は、行動を起こすための動機づけにかかわっていますが、相手の考えや生酛を推測したり共感するなど社会性に基づく認知処理を担っています。

 

特定非営利活動法人 日本成人病予防協会 発行「ほすぴ 183号」より抜粋

 
【ストレスの正体~脳と体の対処力~】その3
  1. 脳のストレス対処力
(2)進化した「前頭前野」による対処力

人類の進化や文明の発達に伴い、古代によく生じていたような本能的な恐怖や怒りの情動は、社会生活や人間関係の調和を重んじる時代へと変化していく中で段々と不要となり、そうした情動を抑える必要性が高まっていくようになりました。そして、その役割を担うために発達した理性の脳が「前頭前野」です。

人間の前頭前野は、大脳皮質の前部に位置する「前頭葉」の大部分であり、大脳皮質の約30%を占めています。高度な脳活動をすることで知られる類人猿のチンパンジーでさえも17%ほどしかないといわれるため、生物学的にみた人間の特徴は、「大きく発達した前頭前野をもつ動物」であるといえ、人間が人間らしくあるために最も必要な脳領域であると考えられます。

 

〈前頭前野の働き〉

前頭前野は、思考や創造性を担う脳の最高中枢と考えられており、生きていくための意欲や、情動に基づく記憶、大脳全体から得た情報をもとに現状を認識し、未来に向け計画を立て実行し評価していく司令塔のような役割を果たします。そのため「オーケストラの指揮者」などに例えられることもあります。具体的には次のような働きを担っています。

・考える・意欲を出す・判断する・記憶する・アイデアを出す・集中する・評価する・応用する・情動をコントロールする・行動をコントロールする、など。



 

特定非営利活動法人 日本成人病予防協会 発行「ほすぴ 183号」より抜粋
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【ストレスの正体~脳と体の対処力~】その2
  1. 脳のストレス対処力
  • ストレッサーは「情動」を生み出す
〈古代の情動と現代の情動〉

地球上に生命が誕生したのは約56億年前と考えられています。そして人類の進化を経て現在の人間の姿となる「ホモ・サピエンス」は約20万年前に誕生しました。ホモ・サピエンスが誕生した後、歴史上のほとんどの器官は狩猟採集生活をして過ごしてきました。

狩猟採集生活においては、現代とは異なり、「今日一日をどう生き延びるか」という生命の危機と常に隣り合わせでした。



こうした古代に生きた祖先には、どのような情動が生じていたのでしょうか。獲物や食料を得ることができれば快楽や喜びに満ち溢れます。しかし、獲物や食料を得るための道中や戦いの場では常に恐怖や不安がつきまとうといった命の危険を脅かすレベルの情動が生じていたことが想像できます。

やがて時は流れ、農耕の技術を身につけた人間は、定住生活を行うことができるようになり、そこでは新たな社会が形成されるようになりました。そして、貨幣の使用や経済活動の発展に伴い貧富の差が生まれ、産業革命以降はさまざまな技術革新が進み、現代社会においては行動範囲や人間関係が大幅に広がり、大量にあふれる情報の中で暮らすことが当たり前になりました。

このような生活の変化は、ストレッサーの質や種類の変化をもたらしました。そして現代に生きる私たちの脳で日々生じる情動も大きく変わってきました。つまり、喜びや悲しみ、恐怖や怒りといった情動が生まれてはいるものの、それはほとんどが「生命の危機」に伴うものではなく、「社会生活」や「人間関係」などに伴う情動であるということです。

こうした情動の変化によって、ストレッサーに対する脳の対処力も自然と変化してきました。そこに大きくかかわるものが脳内の「前頭前野」の発達です。

 

特定非営利活動法人 日本成人病予防協会 発行「ほすぴ 183号」より抜粋
【ストレスの正体~脳と体の対処力~】その1

1.脳のストレス対処力

(1)ストレッサーは「情動」を生み出す

私たちは日々の生活の中で、気温などの環境要因からくる物理的ストレッサーや、人間関係におけるトラブルなど社会生活でもたらされる社会的ストレッサー、疲労・不眠・けが・病気といった身体的ストレッサーなどさまざまな刺激により、マイナスな感情を抱きます。その一方で、何か目標などを達成したり、自分にとって幸福感や楽しみを感じる物事に対してはポジティブな感情が生まれます。

こうした「感情」の中で、一時的で急激に生まれる感情を大脳生理学では「情動」という言葉で表します。

〈情動はなぜ生じるのか?〉

ストレッサーを受けたとき、脳の中で情動が生まれることにはどんな意味があるのでしょうか。

「情動」とは、目や耳、鼻などの感覚器官から得た情報に対する脳の生理的な反応で、瞬間的に生まれる恐怖や怒り、悲しみ、喜びなど、原始的で本能的な感情のことをいいます。

私たちの体において情動を司っているのは大脳辺縁系に属する「扁桃体」です。扁桃体は、視覚や聴覚、嗅覚といった感覚情報をもとに、過去の記憶とつなげながら生理的な「快・不快」や「好き・嫌い」などを瞬間的に評価・判断します。この反応自体も脳の対処の一つといえます。そして、この評価・判断は、私たちの脳や体が次にどう考えて行動するのかにつながる原動力となります。つまり、私たちがストレッサーや環境の変化にどう対処するかを決める上で、重要なきっかけとなる反応が情動なのです。

 

特定非営利活動法人 日本成人病予防協会 発行「ほすぴ 183号」より抜粋

 
【ストレスの正体~自律神経が体に及ぼす影響~】その20


2.自律神経のバランスが悪くなって現れる症状

(8)まぎらわしい症状に注意しよう!

自律神経失調症だと思っていたら、深刻な病気の初期症状だったということがあります。症状が軽いと受信せずに放置しがちですが、自己判断せずに体に異常を感じたときには、受診することがおすすめです。また、健康診断も定期的におこなうことがよいでしょう。

 

〈貧血〉

体のだるさ、動機、息切れ、頭痛、立ち眩みなどが自律神経の乱れで起こる不快症状と類似しています。赤血球のヘモグロビンに含まれる鉄が欠乏し、十分な酸素が送れなくなることでさまざまな症状を引き起こします。

〈糖尿病〉

のどの渇きや体のだるさ、多尿、食欲過多などが自律神経の乱れで起こる不快症状と類似しています。糖尿病でこれらの症状を自覚しているときには、既に進行しているじょうたいです。

〈甲状腺機能異常〉

発汗の異常、動機、体のだるさ、冷え、手足のしびれなどが自律神経の乱れで起こる不快症状と類似しています。更年期の女性に多く見られ、更年期障害にも間違われることがあります。

〈膠原病〉

発熱、体のだるさ、筋肉や関節の痛みなどが自律神経の乱れで起こる不快症状と類似しています。膠原病は、血管や皮膚、関節などで炎症が起こる自己免疫疾患です。要因がはっきりしていませんが、ストレッサーなどで悪化するといわれています。

 

 

特定非営利活動法人 日本成人病予防協会 発行「ほすぴ 182号」より抜粋
【ストレスの正体~自律神経が体に及ぼす影響~】その19


2.自律神経のバランスが悪くなって現れる症状
(7)もっと細くなりたい、細い自分が好き(摂食障害)その2
〈神経性やせ症(拒食症)〉
神経性やせ症は、必要量に比べて過度に摂取エネルギーが少ないために低体重になります。体重へのこだわりから食事量を制限するようになることをきっかけに発症することが多いです。特に若い女性に多く発症し、標準体重よりも30%以上の減少があったり、月経がなくなったりします。体重を減少させることに達成感を感じ、目標体重を達成しても体重と食べ物に対する執着心が解消されずに、「もっと細くなれる」と思い込んでしまいます。食後の嘔吐や下剤の使用などによる食べ物の意図的な排泄を伴うこともあります。神経性やせ症は先進国ではよく見られる障害で「やせていることがよい」と考える文化がその背景にあると考えられています。

〈神経性過食症〉
神経性過食症は、食欲がコントロールできず、むちゃ食いが起こります。体重のコントロールや肥満への恐怖から、食べ物の意図的な排せつを伴いますが、やせには至っていない状態です。食後に意図的な排せつを伴わず、むちゃ食いをすることは「むちゃ食い障害」と呼ばれており肥満のケースが多いです。

これらの摂食障害は、厳密に区別することは難しく、それぞれ移行していく場合があります。

特定非営利活動法人 日本成人病予防協会 発行「ほすぴ 182号」より抜粋
併せてお読みください!